ものすごく今更感があるが、2022年12月始め、新海誠の新作、すずめの戸締まりを映画館で観た。
そして先日レンタルでも鑑賞し、せっかくだから感想を残しておこうと思い立ち、この文章を書き始めている。
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新海誠作品は天気の子、君の名は。はもちろん、言の葉の庭、秒速、星を追う子供、等、比較的初期の作品も鑑賞済みである。
そして若干の差はあれど、どれも好きな作品だ。私は新海誠ファンなのだ。
そんな私が「集大成にして最高傑作」と銘打たれたすずめの戸締まりをスルー出来るはずもなく、劇場まで足を運ぶ事となった。
そして感想としては、まず「集大成」とは言っても、君の名は。以降の集大成だと感じた。
君の名は。、天気の子、すずめの戸締まりの三部作とでも言えば良いだろうか。
ストーリーの繋がりはないにしろ(天気の子で瀧くんが出てきたのが唯一の繋がり?)、これら3作は日常にファンタジー要素を取り入れ、災害による危機をどう対処するかという点で共通していると思う。
また、事前予告を観てある程度察してはいたが、秒速や言の葉の庭で感じた「切なさ」
要素は無かったし、今作も声優が本業ではない方をメインキャストに据えた点は個人的に残念であった。
とは言え、すずめの戸締まりはすごく楽しめる作品だったし、なんなら私的新海誠ナンバーワン作品ではないかとすら思っている。
ネタバレを含む感想になってしまうが、
理由としては冒頭のシーンが終盤に繋がるというストーリー構成。
それはインターステラーような、進撃の巨人のような、観ていて「そうだったのね!」と納得してしまう、貼られた伏線を綺麗に回収していく、結末から逆算して練られたストーリーとでも言えば良いのか、とにかく私はこういうストーリーが大好きなのだ。
例えば、扉の向こうに迷い込んだ鈴芽を助けたのが母親ではなく、高校生の、現在の鈴芽だと知った時。
そこで幼少時の鈴芽に椅子を渡したから、地震もしくは津波で家財が無くなってしまったであろう状況にも関わらず、形見としてあの椅子が手元に残っていたのかと知った時。
中盤、海辺のような場所で凍る寸前の草太。
その草太の目前に扉が現れ、鈴芽が草太を引っ張り上げて助ける。
これが単に寝ている草太を起こした比喩ではなく、物語終盤の鈴芽が要石になる寸前の時間に戻り、草太を助けたのだと知った時。
こういった視聴者がハッと気づく場面にグッとくるのである。
理屈より勢いで押し切る場面もあり、ものすごく緻密に練られたシナリオというわけではないにしろ、物語性は十分に感じられる内容だと思う。
そして言わずもがな、映像も非常に美しい。
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予告開始1秒、鍵を閉めるシーンで「あ、映画館行こう」と思った。
予告内に限って言うと、雨水が葉から滴り落ちるシーンや、鈴芽が髪を結うシーン等、こういった細やかな描写が本当に私には刺さる。
リアルな表現を求めるなら実写で良いじゃないか。と言われそうだが、アニメーションで表現するからこその良さがあると思っている。
リアルな絵画なら、写真で良いじゃないか。とは言わないように。
とにかく作画は最高峰で相変わらず映像に文句なしな出来栄えだった。
その映像に乗るBGMも良かったし、ドライブ中に芹澤が流す懐メロも世代とはズレるが、どれも知っている曲で、思わず「おぉ!」と心の中で声が出る。
と、良かった点を語っていくとキリがなくなるのでこの辺でやめておくが、ここらで触れなければならないのは、ひとつの要素として震災を取り入れた作品であるということだろう。
名言されてはいないが、明らかに3.11、東日本大震災をネタとしており、福島、宮城を始めとする東北に住んでいて被災された方々や故郷が被災してしまった方々等、あの地震で辛い思いをされた方がすずめの戸締まりを観てどう感じるか、やはり思うところがあるのではないかと
想像する。
そう言った意味でも新海誠にとって地震をテーマとするのは非常に勇気が必要だったのではなかろうか。
そして鈴芽はあの震災の被害に遭った子であるという、ある種現実とフィクションを混同した設定にすることによって、彼女の死生観に説得力を持たせる事が出来たのではないだろうか。
だから「死ぬのが怖くない」と発言できたり、観覧車のシーン等、命懸けな、無鉄砲な行動を起こせるのかと。
なのでこの作品に於いて震災を取り入れた事には意味があったと思うし、当然、批判も出るであろう事を考えると、ある意味非常に大きな挑戦だったのではないかと察する。
その他、思った事を書き続けるとこれもまたキリがなくなるので、この辺でやめておくが、
最後に、公開時にyoutubeで某評論家が仰っていた
「鈴芽の体力が異常」
に対して私が感じた事を書こうと思う。
確かにかなり遠い山道を瞬時に移動するのはおかしいと言いたいのはわかるが、そこにリアリティを持たせても意味がないのではないかと感じる。
鈴芽の身のこなしを観ていると運動神経に優れているか、陸上でもやっていたのかという推測は出来るし、毎日起伏のある通学路を自転車で通っている事を考えると、体力もあったんじゃないかと視聴者は鑑賞中に察せる。
他には草太と出会い、非日常過ぎる数日を過ごしている間はメンタル的にもかなりハイになっていて、いつも以上に力が出ているんじゃないかとか
その辺は個人で脳内保管出来る範疇だと感じた。
と、まぁ言いたい事を取り止めも無く言ってしまった文章になってしまった感はあるが、すずめの戸締まりはとても面白かったです。と言うのが今回一番言いたかった。
君の名は。は入れ替わりだけでなく時間がズレている事に意表をつかれたし、天気の子はこういうラストもアリなんだと思わされた。
それでもすずめの戸締まりの、現実の要素を足した計算されたファンタジーが、前2作を上回り、私は一番のお気に入りになりつつある。
そしてあくまで予想、というか願望になるが、今作で集大成と銘打たれた以上、
次作はこれまでとは全く異なるジャンルの作品を提供してくれるのではないかと考えている。